2020/03/28 (土)
ある程度荷物の整理は終わっていた。
どれを持ち帰るか、どれを残すか、何を捨てるのか、そういった会話をしながら当日はすんなり帰れるようここ数日準備をしていた。
僕自身は残る判断をしたが、それでもこの機会にちょうど良いと思い、自分の荷物を整理しようとした。
しかし、そう簡単に思い出がある物は整理できなかった。
「普通のカップルだったら写真とか、ペンダントをこのタイミングで破棄するのだろうか」なんて思ったりした。
当日を迎えると逆にやる事がなくて困った。
11時に彼女のお父さんが車で荷物を受け取りに来る事以外、特に決まってなく、時間をどう過ごすかを考えていた。
考えた結果、二人で写真を撮る事にした。
今考えてみると、アホみたいな事を提案してしまったと考えたが、実感があまりに湧かなさすぎて、何かがほしかったんだと思う。
映画とか、ドラマの最終回みたいな「終わり」を。
現実はそんな事はないと思っていたけど。
三脚もなかったのでガムテープとダンボールで簡単な台を作って高さを調整して2人の写真を撮った。
その写真があまりに今から別れるカップルの姿とは見えず「ギャグじゃん」と言ってお互い笑った。
まだ1時間ほど時間がある。
そこでまだ見終わってないNetflixの「ネクスト イン ファッション」の続きを見る事にした。
9話の途中で終わっていたので、なんとか今日中に最後まで見終われればいいなぁと思って再生ボタンを押した。
涙腺が弱いのでボロボロなく。
今日が大事な日だとわかってはいるが、「ここで泣きすぎたら最後何も出ないのでは?」と思うぐらい泣いた。
9話の最後で、著名なファッションデザイナーの人が
「Go for it.Don't look back.」と言った。
それがあまりに今のお互いの状況への言葉に聞こえてしまって、上手く響いた。
彼女は指を鳴らして気に入っている様子だった。
彼女は彼女が選んだ道に進む。
僕も僕が選んだ道を進む。
過去を振り返ってはいけない。
前に進むだけである。
そのことを改めて認めてくれるような言葉だった。
最終話の見てる途中で彼女のお父さんが来たので中断して一旦荷物を運ぶ作業した。
彼女のお父さんへの挨拶もして詰め込み作業が終わり、また部屋に戻った。
そして再生ボタンをおした。
最終話が終わった。
タイトルどおりの「グランド・フィナーレ」だった。
「良い最終回だったね」とか「これ見終わる前に別れていたら、続きみれないよね」なんて言って、部屋を出て駅まで見送った。
僕は駅に着くまでに最後の言葉を考えていたがその瞬間になるまで、結局言葉が出てこなかった。
改札前になって、何か言おうとした。
言おうとしたが、出たのは「ありがとう」だった。
その後は小さく抱きしめて見送った。
見送った後、今まで言えなかった「さよなら」を言ってその場を去った。
現実の終わり方というのは本当に呆気ないものだが、「終わった」という実感というのは、心の奥の奥までこびりつくものがある。
だけど、「まぁそれも良いか」と思ってしまうあたり、僕はどうしようもなくダメな男なんだろうと思った。
そんなダメな男に付き合ってくれた彼女には感謝しかないと再度思い、寂しく感じている。
ありがとう。
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....そんな感じで感傷的になってしまったので、また女々しい事言ってたらぶん殴ってください。
終わり