※この記事には「The Last of Us Part II」の重大なネタバレが含まれています。
まだ、プレイが終えて無い方は是非プレイが終わってから記事をお読み頂くのを強くお願いします。また、この作品の解釈は1つだけではなく、人それぞれによって千差万別な解釈があると思い、あくまでも僕個人が考えた1つの考察として読んで頂けると幸いです。
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「The Last of Us Part II」をクリアした。
映画3本ぐらいのボリュームがあったけど、クリアした。
— Futoshi Endo 🎮 (@Fendo181) 2020年6月27日
賛否両論が起きる作品だと思うけど、自分にとっては間違いなく、大傑作だった。前作を超える為に、ここまで挑戦的なシナリオで制作した事を全力で称賛したい。素晴らしい作品でした。#TheLastofUsPartll
誰もが思った事かもしれないが、「あぁ〜!終わった!よかった、よかった〜!」みたいな清々しいエンディングではなく、ジワリジワリと心に重い影を落とすような、そんな終わり方だった。あれから数週間を経ち、自分なりに「The Last of Us Part II」とは何だったのか?を出す為に色々と考えていた。
これまで色んなゲーム、特に洋ゲーというジャンルに手を出しE3に行くほどにハマっていた、一人のゲーマーとしての結論を先にいうと、The Last of Us Part IIは間違いなく傑作である。
このレビュー記事を書く前にAmazonのレビューが大荒れしていた背景とか、政治的な捉え方をされた記事など見た上でこの結論を出した。万人受けはしない。
しかし、傑作だと思う理由をストーリー視点から解いて行こうと思う。
グラフィックや操作性については他の方が書いた記事が参考になるので、僕が解釈したThe Last of Us Part IIのストーリーについて語りたい。
因みにこれまで読んだレビュー記事で一番、良かったのはautomatonの以下の記事である。もしよかったらこちらも読んで見てください。
復讐の連鎖による、感情がえぐられる重厚なストーリー
『The Last Of Us Part2』で作りたかったのは、暴力の連鎖についての物語だ。止まらない連鎖と、その結果をあまさず善悪の評価なしにされけだしたい
ref:https://www.youtube.com/watch?v=OJ6N_GefsQo&list=PLKjC3Rcaraytj1X_vNx1KClCSqW6p2DA2&index=2&t=0s
The Last Of Us Part2は復讐の物語だ。
Part1の主人公だったジョエルがアビーに撲殺され、その現場を目の前で見ていたエリーが、ジョエル殺害に関わっていた全員をひとり残らず復讐する。
これが序盤にプレイヤーに課さられた視点である。
これだけ聞くと凄くシンプルだと思う。
Part1が好評だった背景としてはストーリーがシンプルだった事が含まれている。
プレイヤーはジョエルになりきり、この世界で唯一の免疫を持ったエリーを守りながら、徐々に親子のような絆を作り、圧倒的な暴力で感染者やファイヤーフライを打ちのめし、最終的にはエリーを救う。ハッピーエンド!
そう、Part1ではわかりやすく倒すべき敵が出て、わかりやすく目的地が決まって、その中で海外ドラマのような素晴らしいストーリーに当時プレイしてた僕も睡眠時間を削りハマっていた。ハマっていたのだ...
だからPart2もこの視点でくるのかと考えていたので、序盤はスムーズに進められた。
しかし、The Last Of Us Part2の物語はエリーの復讐では終わらなかった。
大きく動き出すのはこの復讐の連鎖に関わる、もう一人の主人公、アビー編が始まってからである。
アビーはPart2での新キャラクターであるが、Part1と大きな関わりがある。
アビーの父親はファイアフライの医者で、ジョエルに殺害されている。
加えてワクチンを開発することのできる唯一の人物であったし、アビーの父親が殺害された事でファイヤーフライは解体し、組織もバラバラになってしまう。
そしてアビーは必然とジョエルに計り知れない復讐心を宿し、回想シーンを見ても、ジョエルを復讐することが生きる原動力というぐらいの発言をしている。
ファイアフライにいた頃は健気で父親が好きで、コイン集めが好きな少女が、WLFに入り筋力とサバイバルスキルをみにつけ、「ジョエルを復讐するその日」がくるまで鍛えていたと考えると、恨みは相当だと捉える
....と、ここまでのバックグラウンドを聞くと、アビーの復讐の物語はエリーと同等、いやそれ以上にあるとわかる。
しかし、エリー編をプレイをしている時に、このバックグラウンドの背景は説明されず、エリーを操作している中でいきなり場面転換され、アビーを操作する事になるのだ。
この時は今でも覚えているが、僕は握っていたコントローラーを一旦おいた。
頭の処理が追いつかず、「なぜ???どうして??というかジェシー..えっ!?」という感じで急展開に追いつけなかったのである。
そして、恐る恐る再度コントローラーを握り、目の前でさっきまであれほどジョエルを殺して憎んでいた敵 = アビーを操作すると、「これは誰の復讐なんだ?」と気づくのだ。
そして、アビー編をプレイしていく内に暴力と復讐の連鎖は、ジョエルがアビーの父親を殺害してしまった時から始まっていたし、自分がそこに加担していた事にゾッとするのだ。
これは今までゲームをしていて得られなかった視点というか、価値観である。
Part1のジョエル視点から見守り続けていプレイヤーに対しは手のひら返しされたような感覚だと思う。自分が愛していたキャラクターを撲殺した敵キャラクターを操作し、更にそのキャラクターに感情移入しなければならないと言う事に...
Neil Druckmannはなぜこのストーリーに仕上げたのか?
アビーをプレイしていた時に1つのシンプルな疑問が湧いた。
「なぜ、こんなストーリーに仕上げたんだ?」
ファンなら誰もが思う事だ。
何も、こんな仕打ちはしなくても、だた生き残って平和にエリーとジョエルが過ごすだけでも良いんじゃないかと...。
この問いに関してはNaughty Dogの副社長であり、The Last of Us Part Ⅱのストーリーを担当した「Neil Druckmann」を知る必要がある。
Neil Druckmannはインタビュー動画でも上記のように語っており、続編のPart2に関しては相当な時間と思考をして心臓部分のストーリーを考えているし、Part1のプレイヤーも事も当然考えている。
インタビューの最後には以下のように答えている。
ゲーム内の出来事についてはスタジオでも様々な議論をしたよ。良い意味で、前作より意見が分かれるかもしれない。深い疑問を投げかけるし、解釈の余地もあるからね。プレイヤーも味わって考えほしい。
しかし、このインタビュー動画だけだとストーリーの核心には触れらていない。
つまりは、ジョエルを殺して、エリーとアビーの復讐の連鎖に仕上げた原動力は何だったのか?
この疑問に関してはファミ通7月号にあったNeil Druckmannへのインタビュー記事で1つの解釈ができる。
(余談だがもし、The Last of Us Part Ⅱが好きな方は16Pに及ぶインタビュー記事が最高なので、是非読んで頂きたい)
一部文章を抜粋して載せる。
--ただ、前作の過酷な旅を乗り越えたファンの多くは、ジョエルとエリーがその後幸せに暮らす事を願ったと思います。本作ではエリーを再び、過酷な旅に出す事に、ふたりの生みの親である開発者の皆さんの間でも葛藤はあったのではないのですか?
Neil Druckmann もちろん葛藤はありました。前作は長い期間をかけて作りましたし、本作の開発も長期間にわたっているので、ふたりには強い愛情があります。ただ、前作のエンディング後、「このあとふたりは永遠に幸せに暮らしました、悪いことはなにも起こりませんでした」という物語にしたのでは、彼らに敬意を示せないと思ったのです。
-- ジョエルとエリーに対する敬意、ですか?
Neil Druckmann ふらりの最大の敬意は何かを考えたときに、それは人の心をしっかりと動かせるような、それでいてジョエルとエリーらしい物語を通して、ふたりをリアルな人間として描き切る事だと思ったんです。
だから、葛藤は抱きつつも、復讐をテーマにしています。
今回の復讐のストーリーには欠かせない、エリーの葛藤に関わる2つのエピソードが絡んでいる。
- (1)ジョエルがファイヤーフライのワクチンを生成する医者を殺した事
- (2)医者を殺したが結果的にエリーは救われた。しかし、ワクチン治療はこの世界には用意できず、間接的に村のこどもが死んでしまった事
(1)に関してはジョエルへの怒りがあり、(2)に関してはエリー自身への怒りがある。
つまり、エリーは自分が生き残ってしまったことへの強い葛藤を持っている中でジョエルが殺され、殺したアビーへの復讐の旅にいき、今度はアビーの復讐の旅になり、最終局面に移ると..を考えると、復讐の旅でもあるが、これはエリーがジョエルやアビー、そして自分自身を許す旅でもあるのではないかと考えられる。
ジョエルがアビーの父を殺した事で始まった、止まらない暴力の連鎖をエリーは許す事で止めたと解釈できるのだ。
Neil Druckmannが、今回のストーリーに仕上げた原動力は改めて考えみる。
プレイヤーがコントローラーを通じ、エリーやアビーに感情移入しながら、このThe Last of Us Part IIの世界をリアルだと感じ、決してゲームの出来事ではなく、現実世界と地続きな出来事に仕立てる為にこの復讐と葛藤を含んだストーリーを仕上げたんだ考えます。
あるインタビューでNeil Druckmannが「嫌われてもかまわない」と発言していましたが、これはリアルを追求し、没入感を高めた結果、そうなることを想定しての発言だと思うので、相当こだわりがあったんだと思います。
また、このゲームをしていたわかったというか、Neil Druckmann が問いた疑問というのは「正義は価値観で変わる」という事だと理解できます。
この世界ではアビーたちが所属するWLF(ワシントン解放戦線)だけではなく、WLFと対立するセラファイトが出てきて、アビー編で大きく関わってきます。
その際も上記の「正義は価値観で変わる」については凄く意識されるストーリーになっていて、これまでたくさんの洋ゲームしてきたが、The Last of Us Part IIほどストーリーが練り込まれ、感情移入し、ゲームの世界に入り込んでしまうほどコンテンツには出会った事がないと思います。
ちょっと前までは「Red Dead Redemption 2」がそれだと思ってたのですが、グラフィックの向上だけでなく、ストーリーで勝負しかけてきた、Neil Druckmann、そしてNaughty Dogには最大限リスペクトを送りたいです。
ここまでプレイヤーの感情を揺るがし、没入感を極めたストーリーを作ってくれて本当にありがとう。
まとめ
もうストーリーで語りつくしてしまったので、これ以上述べる事はないです...。
ただ、このゲームが好きな方はどうかThe Last of Us Part IIの世界を楽しんでほしいです。それがゲーマとしてできる開発者への応援だと思うので。
最後にこの記事を書くにあたって参考にした記事やインタビュー記事を載せておきます。本当はNeil DruckmannのWikiにあった、2000年のRamallah lynching事件がストーリーに解釈に関わってくるという話もできると思うのですが、それも考察の楽しみの1つとして残しておくきます。
おわり!
参考資料
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『The Last of Us Part II』レビュー。愛が愛を叫ぶ、暴力と愛に満ちた至高の傑作 | AUTOMATON
- 『The Last of Us PartII』開発者インタビュー。テーマは“愛”から“憎しみ”へ「ほかの人を思いやる愛があるために憎しみが生まれる」 - ファミ通.com
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「The Last of Us Part II」開発者インタビュー。プレイボリュームは25時間以上。スムーズなエリーのアクションで戦闘も濃密に
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Druckmann returned as creative director for The Last of Us Part II (2020), co-writing the game alongside Halley Gross;[54] Straley did not return to co-direct the game.[55] The game's themes of revenge and retribution were inspired by Druckmann's own experiences growing up in Israel, where violence was a frequent topic.[6] He specifically recalled watching footage of the 2000 Ramallah lynching, and how, after hearing the cheering crowds, his mind immediately turned to violent thoughts about bringing the perpetrators to justice.[56][57] He wanted the player to feel a "thirst for revenge" before making them realize the reality of their actions.[6] Druckmann noted that some members of the team felt reluctant about the game's cynicism, but ultimately he preferred a divisive story than a "mundane" one.[6] The game was released on June 19, 2020, to critical acclaim. The story polarized critics; some praised the writing for its nuance and effectiveness,[58][59] while others criticized its pacing and repetition of themes.[60][61]
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